山の恵みと人の知恵、「山伏の精進料理教室」に行ってきた その1

昨年(2012年)の10月28日、「山伏の精進料理教室」に行ってきました。

「精進料理」といえば、なんだか「京都のお寺」のイメージですが、この精進料理は山形県の出羽三山で修行する山伏さんたちや、出羽三山を信仰する信者さんが、山に登る前に、自らの身を清め、山と同化するための料理なんだとか。

出羽三山といえば、日本有数の山伏の修行の地。
どんな精進料理なのでしょうか…!

◎文・写真 山本ペロ

会場は渋谷のすぐ近く、三軒茶屋の駅ビルにある「生活工房」。

当日教えてくださった先生たち。みなさん、出羽三山の近くの宿坊やお店の方たちです

この日教えて頂いたメニューは、「もってのほかとからとりのくるみあえ」「ごま豆腐」の2品です。

美しくておいしくて身体にいい、くるみあえの作り方

さっそく、まずはくるみあえから教えていただきます。
材料は、山形の名物、もってのほか。紫色の食用菊です。
ビタミン類が豊富で、アンチエイジング、コレステロールを下げる働きなどがあり、出羽三山のあたり(庄内地方)では「延命楽(えめらく)」、命が延びる食べ物、という名前で呼ばれています。

まずは、このもって菊を、はじきます

くるみあえの先生、大聖坊の星野さんの最初の一言に、
参加者みなさんが「???」となっていましたが、
つまりは、この菊の花びらをむしる、という、土地の言葉のよう。
この一言で、ぐっと「出羽三山ワールド」に引き込まれていったような気がします。

花びらだけになったら、ゆがいていきます。

途中で酢をたーっぷり入れて、大体2、3分ゆでて…
ざるにあげ、よーく水で洗います

すみません…。この日、カメラの撮影モードを間違えてしまい、変な色に写ったのを、自然にするべく補正をしたら、ちょっと赤くしすぎたかもしれない…。しかし、本当に、ゆでるとき、酢を入れたとき、洗っているときで、どんどんはっきりと色が美しくなっていく様子に、はっと息をのみます。

くるみあえの「くるみ」は、日本のくるみ「鬼くるみ」を使います。
ふつうのくるみより味があり、おいしいそうです。
庄内地方では、ふつうにお店で買うことができるそう。
いいところですね~。

ドライバーなどを使って実をほじり、すりばちで擦っていきます。

粒がなくなってもろもろ~になるまでていねいにていねいに擦りまして、みりん・しょうゆ・砂糖を入れると、こんなどろどろに。ちょっと味見をしたら、これだけですっごくおいしい! ゴマよりもさらにナッツ感が強く、コクがある味です。庄内地方の里芋の茎「からとり」をゆで、しぼったものを3~4㎝くらいに切って、もってのほかと混ぜていきます。

美しいあえもの、「もってのほかとからとりのくるみあえ」の完成です。

出羽三山のゆかりある別名をもつ精進料理「ごま豆腐」のつくりかた

つづいて「ごま豆腐」。
このごま豆腐はこのお料理では別名「由良の白山島(ゆらのはくさんじま)」とも呼ばれているようです。出羽三山を拓いた蜂子皇子が、流れ着いた由良に浮かぶ島が、ごま豆腐の姿に似ているからだとか。精進料理には、こういった、開祖や出羽三山の場所の名前にちなんだ料理名がいくつかあるそうです。

分量の水とごまを、よーくミキサーにかけます。

その液を、裏ごし機に少しずつ入れながら、こしていきます。
この裏ごし機の目が細かければ細かいほど、なめらかな豆腐になるのだとか。

こした液に片栗粉を加え、へらで丁寧にまぜたあと、おもむろに手を突っ込み、さらにまぜます。片栗粉は混ざりにくいので、手の触感でさぐりながら混ぜたほうが、確実だそうです。
あとは火にかけ、常にへらで混ぜていると、あるところからいきなり液が固まりだします。固まってからも、もうひとふんばりして練り続けます。片栗粉の粉っぽさをとりのぞき、コシが出るからだそうです。

バチバチっと音がして、練りあがったら、バットに流し込み、室温でゆっくり固めて完成!

あとは、このごま豆腐にかけるあんを作ります。

この辺の人はね、なんにでもあんをかけるんです。そうめんとかたまごとか…。だから、ごま豆腐もあんをかけます。

と、手際よくあんを作りながら説明してくださるのは、多聞館の土岐さん。寒い土地では、あんはとっても心地よさそうな食感です。

しょうゆ・水・酒・砂糖・片栗粉を入れたものを火にかけ、ひたすらかき回します。こちらも固まって火を止めたあと、湯気が出なくなるまで、ずっとかきまわし続けます。こうしないと、食べているうちにすぐあんがシャバシャバになってしまいやすいのだとか。

だから、このあんを作る作業は、宿坊で生まれた子供の仕事だったんですよ。あとは、お客さんのためにスリッパをていねいにそろえたりとか。僕もそうやってやって育ったんです。

 

次は、ついに他のメニューも合わせた、精進料理の登場です!

その2につづく…