前回では、出羽三山で食べられている精進料理の料理教室の様子をお伝えしました。
今回は、ついに精進料理の試食です!!
◎文・写真 山本ペロ
出羽三山精進料理、フルコース、登場~!
できあがったくるみあえとごま豆腐をお膳に盛って、
出羽三山の精進料理のできあがり!
このお膳のお料理は、左上から時計まわりにこのようになってます。
- もってのほかとからとりのくるみあえ
- ごま豆腐→最後に生姜を添えています
- かのか(庄内地方のきのこ)とほうれんそうのおひたし
- まきあぶらげ→厚揚げを巻いて煮たもの。優しくておいしかった~
- 塩蕨をもどして煮つけたもの
- あけびの味噌炒め→あけびの白いところではなくて「皮」を使ったもの。ナスみたいでおいしい。
- ふきの煮物
- 湊揚げ →白身魚の揚げ物を模したもの。豆腐と長芋、黒いのは海苔。
いわゆる「畑で作ったもの」だけではなく、かのかやあけび、わらびなど、
山の恵みの食材をふんだんに取り入れていますね。
どれもとってもおいしくて、自然にすっすっと身体に入っていく感じでした。
そして、なんだか身体の力がすっと抜けて、優しい気持ちになる味です…。
…といいながら、帰りにサブウェイに入ってフライドポテトバカ食いしたわたくしですが…汗
人間は、癒されたいと思いながら、どこかで「癒されたくない!」と思っているのでしょうか…。まだまだそれこそ精進が必要です…。
「継いでいく」味
ところで、この料理教室は「精進料理の味を継いでいく」ということがテーマになっています。
なので、ここでは提示されるレシピなどなく、料理教室のようすを耳で聞いて、自分なりにノートをとって、「味を継ぐ」のです。
わたくしも、書式にしたがって、ノートをとってみました。
ご興味ある方は、見づらいですが、ご覧になって「継いで」みてください!
そのあと、やっぱり「継ぐ」からには、書いただけではなく、
きちんと作らねばな、ということで、作ってみました。
山伏さんの「いただきます」
最後に、この教室で、出羽三山と精進料理の文化について解説していた、山伏の成瀬正憲さんから、こんなをコメントを頂きました。
みなさんのお住いの近くを注意深く歩いてみると、出羽三山信仰を示す石碑があるかもしれません。東日本の各地に多く建てられていて、そのほとんどの地域に出羽三山をお参りするための「講」というグループが結成され、毎夏出羽三山詣で(奥参りと呼ばれます)が行われてきました。
だからこそでしょう、地域と出羽三山の間には両者を結びつける多種多様な”メディア”が存在しました。講も、宿坊も、白装束も、精進料理も、人と山の間にある”メディア”といえ、それは聖なる空間に入るために心身を整える一歩一歩であり、魂の生まれ変わりをなすための大きな仕組みであったのです。
ごま豆腐は出羽三山の開山伝承にちなんで「由良の白山島」と名付けられています。聖地が名付けられた品を食すことは、出羽三山という祈りの宇宙を構成するエレメントを自らに取り込むことと同じ。つまり出羽三山の自然とひとつながりになるんですね。
このような文化と自然が長い間、ここ庄内地方では、継がれてきました。なかでも、精進料理は、食という最も日常に近いところで人々に親しまれ、継がれてきたもの。
出羽三山の精進料理は、自然と人の『継いできた力』が、ともに作り上げた料理なんです。
ちなみに、山伏の専門用語では、「いただきます」とご飯を食べる時には「さんじょう(散杖)」というそうです。密教の加持祈祷などで、供物をつまむ箸の形の法具のことだそうですよ。
わたしもかつて出羽三山に登りましたが、食べていた精進料理に、こんなにいろんな意味と、手間がかかっていることは知りませんでした! 山伏の精進料理は、羽黒山山麓の宿坊などで召し上がれますが、わたしのおすすめは、やっぱり、出羽三山に登る時に食べていただきたい!
羽黒町観光協会では、夏などに山伏が先導する出羽三山ツアーがあるそうですので、ぜひ、チェックしてみてください。
今回教えてくださった先生方が所属する「出羽三山精進料理プロジェクト」は、現在も、さまざまな活動を行っているそうです。詳しくはこちらをご覧くださいませ!
イベント概要
ワークショップ「聞きながら綴る 出羽三山 精進料理レシピ」
主催:公益財団法人せたがや文化財団 生活工房
協力:NPOフードデザイナーズネットワーク、羽黒町観光協会
会期: 2012年10月28日(日)
会場: 生活工房